理想の柔術スタイルと現実

先日の道場飲み会で前田さんから「いかに現在の柔術スタイルに行き着いたか」について話を聞き、これは「自分がどんなテクニックをやれば良いのか分からない」という初心者の方々の参考になるのではないかと思ったのでここに書こうと思います。

 

現在前田さんは、

 

ボトムからはディープハーフとアンダーフックハーフガード

トップからはオーバーアンダーパスとレッグウィーブパス

 

にかなり重きをおいて練習しています。

 

ですが、入会当初はボトムからの三角絞めをやりたくてそれを中心に練習していたそうです。

 

言われてみれば確かに前田さんはオーブンガードの基本型からのトライアングルチョークをやっていたことを思い出します。そして中々できるようにならず悩んでいたことも思い出します。

 

しかしある時、ベルナルド・ファリア選手がレアンドロ・ロ選手に一本勝ちしている試合を見て、今まで敬遠していた泥臭いスタイルが自分にはあってるのではないかと考えを改めたそうです。

 

当時レアンドロ・ロは自分の階級では圧倒的な強さだったのでしたが、ひたすら同じことをやり続ける地味~なスタイルのベルナルド・ファリアに手も足も出なかったですね。

 

それまで前田さんはディープハーフガードをクラスで紹介されても「いやいや、俺こんなセミみたいなことするために柔術始めたんじゃねーし。」と思っていたとのことですが(笑)、実際に使ってみるとめちゃめちゃしっくりきたようです。

 

それまでに様々なテクニックを練習してきて「すぐにできるもの」と「何回やっても使えるようにならないもの」があるというのは気づいていて、

 

「自分の理想とするスタイル」≠「自分が強くなれるスタイル」

 

ということがあるのは、空手やキックボクシングをやっていた前田さんも分かってはいたと思います。ですが、理想を捨てるというのは中々辛い決断ですので頭では分かっていても実行できなかったのだと思います。

 

もし入会してすぐの時に僕が「前田さんの体型とか体の硬さ、不器用さだと三角絞めは止めといてディープハーフやった方がいいですよ。」とか言われても前田さんは聞く耳を持たなかっただろうし柔術が嫌になってしまった恐れすらあります。

 

柔術で強くなるには自分と向き合って今の自分を受け入れることが必須ですね。それは結構辛いことでもあります。よく渡辺直先生とこの話をしました。「だから趣味で柔術やってる会員さん達はすごい。尊敬している。」と。

 

誤解しないでほしいのは「今の自分」というのは「未来の自分」じゃないということです。前田さん自身が「今の自分はディープハーフに専念して磨くのがベストの選択だと思っているけど、もっと強くなった時に改めて三角絞めとかやってみたら今度は使えるようになるんじゃないかと思うんですよ。」と話していましたが、これは僕も全く同じ考えです。

 

僕自身股関節が硬いこともあり紫帯くらいまで足を利かせるってことが1mmも理解できませんでした。自分にはできないものだと思い、レスリング的なテクニックに専念していました。

 

ですが、茶帯になって下の帯の人とかなり余裕を持ってスパーリングできるようになってから、徹底的に足を利かせる練習をした結果、同格の相手との試合でもある程度使うことができるまでになりました。

 

だから初心者の人には「理想は持ちつつ、現在の自分を客観的に判断して自分のスタイルを作っていく」ことをオススメしています。

 

中山